手間暇かける現金給付(コロナウイルス対策)

 

こさいたろうの視点・論点 0138

2020/04/04

 

手間暇かける現金給付(コロナウイルス対策)

 

4月3日、安倍首相と岸田・自民党政調会長との会談で、現金給付・一世帯あたり30万円の方針が固まったようです。岸田氏によると金額の根拠は、「さまざまな議論の結果で、日本の世帯の人数など、さまざまな観点から出てきた数字だ」と。まず、こんないい加減な理由付けでよいのでしょうか。

 

さらに、岸田氏は、「スピード感が大事だと強く申し上げ、迅速に支給することが大事だと強調した。詳細は政府でしっかり詰めてもらいたい。経済対策の全体の規模と、ほかの課題は、週末にかけて政府としっかりと調整していきたい」と述べたと言います。

 

以下、NHKの報道より。「政府は今後、現金給付の対象範囲など具体的な制度設計を詰めたうえで、来週前半にも取りまとめる緊急経済対策に盛り込むことにしています。そして、今年度の補正予算案を編成して速やかに国会に提出し、大型連休前の成立を目指す方針です。」

 

これ、スピード感あるでしょうか。迅速に支給することになるでしょうか。平時の対応の域を出ません。平時、少し頑張って早くしたという程度。実情が見えているとは思えません。永田町の箱庭からしか世の中が見えていない証左ともいえます。

 

仮に、GW前に補正予算が成立しても、安倍・岸田会談で示された方針でいけば、給付の可否の審査・判定作業がそのあとに入ります。こんな状況でどうやって「一定水準まで所得が減少した」と証明することができるのでしょうか。平時と同じように、役所の窓口に出向けということでしょうか。窓口で濃厚接触でしょうか。

 

そして、給付は世帯単位。一人暮らし世帯でも大家族でも、一律世帯単位。不公平極まりない制度になるのは目に見えています。戦前までの「家制度」を中途半端に引きずってきた日本社会の弊害。個人を最小単位とした政策が打てない、危機の中、致命的だと思います。

 

全国民に一律10万円を給付、さまざまな識見者が提言しています。私も同感です。煩雑な審査や判定の作業も不要です。お金持ちにも配るのは如何か、という声もありますが、そんなことを言っている場合でしょうか。多くの国民に、外出制限がかかる中でも何とか持ちこたえてもらうことが最優先なはずです。

 

とにかく、日本の行政は、役所の「しごと」が確保されるように制度設計される傾向があります。今回の給付施策で言えば、「収入の減少の確認作業」という膨大な行政コストが発生します。先に実行されてしまった消費税増税でも、軽減税率という二重課税制度で役人の裁量権を確保しています。また、世帯への現金給付とは別ルートで、個人事業主に100万円、中小企業に200万円の現金給付も検討中とのこと。これは私が思うに、平時の縦割りそのもの。経産省の仕事確保、権限・権益確保にしか見えません。なぜ統合パッケージ化できないのか。

 

だから、このような緊急事態の際も、同じような対応しかできないのだと思います。私は、安倍政権の緊急事態対応、役人が振り付けているように見えてなりません。小さな布マスクをつけて「2枚配ります!」と自信満々で話す安倍首相の映像を見ると、マリオネットのように見えて悲しくなります。

 

布マスク2枚配る、なんていう発想、霞が関の高級官僚から出てきたにしても、まともな政治家なら「今じゃない」ってわかるはず。裏を返せば役人の言いなり。役人がアイデアを出すのはいいんだけど、取り入れるかどうか判断するのが政治家の役目でしょ、と思うのです。

 

つまり、人事権を掌握し政治主導をしているように見せかけて、実は、役所が官邸をコントロールしていることが、この危機的状況の中、浮き彫りになってしまったように感じます。首相だけでなく、たくさんいる閣僚も雁首揃えて、布マスク2枚配布を異議なく了承したわけで。かなり末期的症状です。

 

B29に対抗して竹やり訓練した、という太平洋戦争時の出来事に重ね合わせて語る論調もありました。竹やり訓練の時代、それへの反対意見は封じられていました。今はまだ反対意見を自由に表明できます。それだけでもまだ未来への可能性を感じます。ただ、先の戦争前夜も、あるころまでは国民が自由に発言していたものの、一つの敵に立ち向かう方向に社会が収束する中で、社会全体が不自由な方向に収斂していってしまったという歴史があります。しかもそれは、軍部の暴走が理由とされることも多いですが、それだけでなく、国民自らがそのような世論を作り上げていったことも分かっています。

 

なので、自らと異なる意見であったとしても、このような緊急事態にあっても、さまざまな声が自由に表明される社会、それだけは絶対に守っていかねばならないと、強く感じます。

 

今は、役人の平時感覚を追認している政府を我々が持っている以上、それを批判し方向転換させる議論が極めて重要だと感じています。社会に及ぼす力はほとんどありませんが、意見表明致します。

 

 

農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)

 

     

 

 

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