こさいたろうの視点・論点 0119
2019/12/09
政府の情報は私たちのもの 〈桜を見る会問題を受けて〉
現場を知る由もない一国民から見ると大事な臨時国会は、公職選挙法違反が疑われた「閣僚辞任」に始まり、首相や与党議員の後援会行事と化したかのような「桜を見る会」の問題で終わってしまったように見えます。
国会召集直後の日本経済新聞の紙面によれば、この臨時国会では以下のような重要法案が審議されたはずです。
日米貿易協定案:牛肉や豚肉の輸入関税をTTP並みに下げるなど
会社法改正案:上場企業などに社外取締役設置を義務付け
教職員給与特別措置法改正案:教員の長時間労働是正を目指す
外為法改正案:原子力関連企業などへの外資の出資規制強化
情報処理促進法改正案:デジタル分野に特化したガバナンス・コード作成
これらはどうなっただろうか、じっくり新聞を読めばわかるのだろうけれど。与党が圧倒的多数の国会なので、最後は多数決で可決するのでしょう。でも、普通に暮らしていて、全く耳に入らないのもどうかと思います。日米貿易協定において日本製自動車への追加関税が将来的にどうなるのかなど、徹底した審議を行い、深掘りすべきだったはずです。今の野党の決定的にダメなところ。
ただし、だからといって、「桜を見る会」の問題は大したことではない、とは決して言えません。
桜を見る会は、首相や閣僚、与党議員の後援会行事ではありません。後援会の旅行会のメインイベントのように扱うべき行事ではないはずです。それだけでもう問題です。いや、後援会行事であっても最低限実費をもらうのが当たり前で、飲食をふるまうことがあってはなりません。しかも、桜を見る会では、それを税金でやっているということがほぼ明らかになっているわけです。
今年の予算は5500万円、参加者1.8万人、一人あたり3000円程度、飲食やお土産代1000円程度は儀礼の範囲、などと公式発信している識者もいますが、僕は全く納得できません。金額の多寡の問題ではありません。今を生きる政治家の本質を露わにしているからです。支援者への特別サービス当たり前、しかも与党議員は税金でやっても問題ない、そういう本質を。
いつの間に、そういう政治に逆戻りしてしまったのでしょうか。
少なくとも、僕が政治を志した1990年代前半、そういう政治を変えねばならないという空気は政治の世界にありました。自民党にも、若手や良識派の中にあったように思います。そういう国民の思いが、2009年の政権交代という形で具現化したのだと思います。でも、最高潮に高まった期待はあっという間に裏切られました。そして、安倍政権の誕生により逆戻りが始まったように見ています。
逆戻りと言っても、昭和の政治では奥ゆかしさというか、自己抑制というか、そんな雰囲気があったようにも思います。いいことではありませんが。でも、今は、やって当然、何が悪いのか、という空気が一部にあるようです。
安倍首相の元秘書である下関市長・前田晋太郎氏は、「何十年も応援した代議士がトップを取り、招待状が届いて、今まで応援してきてよかったなって、いいじゃないですか」と述べたそうです。首相が地元支援者を招待することをよしとしています。このような言動が、今の日本社会の一部の空気を物語っていると僕は思うのです。もう一度、そういう政治を変えられるでしょうか。
前置きが長くなってしまいましたが、桜を見る会について、最も大きな問題点は簡単に公文書が破棄されてしまうという点です。誰の推薦で、どんな人たちを、何人招待したのか。そして、実際に参加した人は誰で、何人か。菅官房長官による政府公式見解では、もう検証できないということになっています。これが大問題だと僕は思うのです。
公文書。これは役所・役人の所有物?与党議員だけのもの?違いますよね。国民主権の国である日本では、公文書は間違いなく国民のものです。勝手に廃棄や改竄することは許されません。原則、すべての国民に閲覧の権利があります。
これらの考え方も、平成前期から政治の世界で声高に叫ばれていたものの、その実現を期待された政権交代の失敗で国民は幻滅。安倍政権に移ってからは抑え込まれていた権力者が解き放たれるが如く、時計の針が戻されていきました。森友学園決裁文書改ざん事件や防衛省日報隠蔽問題、厚労省の毎月勤労統計の改竄などが次々と発覚しているのがその証左です。
国民の財産ともいえる公文書・政府の持つ情報が、いとも簡単に捨てられたり、書き換えられたりする政治。それに蓋をしてしまうような政治。残念です。もう一度、そういう政治を変えられるでしょうか。国民に問われています。
農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)
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