農業への補助金を考える

 

こさいたろうの視点・論点 0028

2017/12/02

 

農業への補助金を考える

 

先日、作業をしながらラジオで国会中継を聴いていると、かつての同志である井出庸生さんの声が聞こえてきた。井出さんはいくつかのテーマを取り上げていたが、そのうちの一つが青年就農給付金と呼ばれる農業分野の補助金についてだったので、作業の手を止めてじっくり聴いてみることにした。

 

井出庸生さんとは、みんなの党の公認候補として同じ時期の衆院選を戦った同志。僕は落選したが、彼は当選し、現在三期目。祖父は三木内閣の名官房長官・井出一太郎氏、叔父は新党さきがけのチャーターメンバーの一人、元厚生大臣の井出正一氏。

 

いわば政界のサラブレッドで、僕のような北海道原産の無名の駄馬とは血統的に比較にならず。さらに、東大野球部出身でNHKの敏腕記者を経ての国政入りというのも、地べたを這いずる地方議員出身の僕とは、これまた比較対象外とも言えるのだが。

 

叔父上の井出正一さんには、僕が新党さきがけ在籍の時代、本当に目をかけて頂いた。井出一太郎さんから井出正一さん、新党さきがけの流れを汲み、リベラルな思想に寛容な保守主義に足場を置いていると思われる井出庸生さんには、勝手に政治家として近しい気持ちを感じていた。

 

また、八ヶ岳を逆に北側から眺めるところにいる井出庸生さん。甲斐と信州で国は違うが、信州往還という古来からの街道で繋がる同じ農村地帯に生活する者としても、これまた勝手な親近感がある。ちなみに、盟友・柳田清二君が佐久の市長をしていることも縁の深さを感じている。

 

さて、井出庸生さんが取り上げた青年就農給付金事業(大臣によると今は農業次世代人材投資事業と改名しているようだが)は、新しく農業を志す人や家業としての農業を承継する人、個人に給付されるいわゆる補助金。

 

就農時の経営確立を支援する資金として5年、就農前の研修期間2年の支援制度もあり、年間150万円、最大で7年間1050万円の補助金が個人に給付される仕組み。平成24年から始まっていて、平成33年まで継続の予定。これまで予算額は年間200億円で、来年度は250億円の要求とのこと。

 

僕のまわりでも、この給付金を受け取っている人を何人か知っている。少なくとも彼らは、まじめに農業に取り組み、制度の趣旨を理解し、5年以内には独立して生計が成り立つように懸命に取り組んでいる。僕が見える極めて限定的な範囲では成果が上がっているとは言える。

 

でも、みんなが同じようなのか、疑念が拭えないのも事実だ。補助金支給の途上であえなく離農してしまうような事例も耳にする。さらに、今は制度開始から5年で、来年から初年度受給した人が補助金なしでの農業経営を始めることとなる。本格的な成果検証ができるのはこれからだ。

 

一人に、生計費用も含めた1050万円もの補助金が給付される政策はほとんど例がない。それだけ農業を職業とする人が減り続けているからなのだとは思うが、5年の受給期間を終えてすぐに離農してもペナルティーはない(29年度からは終了後5年の就農義務が課されるようにはなったが)。

 

つまり、ある人の5年間の生計費用を援助する、それだけの政策にもなりかねない訳だ。どんな事業を始めるにせよ、自ら資金を貯め、あるいは集め、借りてリスクを背負って開業するのが当然だ。産業としての農業に人材が集まらないからと言ってお金を与えることで解決に繋がるのか。

 

井出庸生さんは、このような政策が「ずっと続けられるのか」とも指摘していた。もっともな指摘だ。ずっと税金をバラまかなければ人材が集まってこない産業には、別の理由が存在しているはず。農産物の価格が安すぎる。農地を所有するハードルが高い。地域の受け入れ体制の課題…

 

井出庸生さんは質疑の中で、こんなことも言っていた。新規就農者の90%は補助金を受け取っていない。成功する人は、自らリスクをとり、事業計画を立て、目標に向け努力しているはず。成功する人もいれば、失敗する人も残念ながらいる。どんな事業でも同じことではないか。

 

井出さんの質問に対し齋藤農水大臣は「(政策の)実の上がるように努力していく」と言っていたが、典型的な役所答弁。どういう結果が得られれば「実の上がる」状態なのか、全く答えなかった。税金の使い道という政治の根幹、井出さんにはもっともっと突っ込んでほしかった。

 

僕は、農地の所有のあり方にもっと切り込むべきだと思っている。本気で地域に根を張って、いわば死ぬまで農業に取り組むことを約束する人が農地を所有できるように。補助金含みで農産物が生産され、その分販売価格が安くなっている現状にもっと政治は目を向けるべきだ。

 

今回取り上げている補助金以外にも、農業関連には無数の補助金が存在している。いずれ取り上げたいと思うが、一部の農業生産法人に食い物にされている感も否めない。政策を複雑に絡み合わせて、いったいどれだけの補助金が農政に投入されているか分からなくしているようにも見える。

 

民主党政権時代、農家への直接支払いによる戸別所得保障制度の政策が公約され、自民党政権に交代後も名称は変わったが政策は引き継がれた。この政策を基盤に、各種補助金を整理し、シンプルに農業の継続、新規就農の促進を目指すことが望ましいのではないだろうか。

 

 

農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)

 

 

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