「責任を取らない政治は信頼を得られず」 …〈こさいたろうの視点・論点 0006〉

こさいたろうの視点・論点 0006

2017/07/07

 

 

「責任を取らない政治は信頼を得られず」

 

 

嵐のような東京都議選の結果が出ました。

 

小選挙区制であれば、これほどもオセロゲームもあり得ますが、中選挙区が主体の都議選でこれほどの結果は、ある種革命的といっても過言ではありません。ほとんどの選挙区で都民ファーストの候補者がトップを占め、複数擁立区でも複数当選、追加公認も含めて56人中55人当選という驚異的結果に。逆に自民党は、下位当選もできない候補者が続出し、過去最低を大きく更新し23人当選にとどまり、国政第二党の民進党は候補者すら揃わず、当選者は5人と激減しました。さまざまな論評はありますが、僕は、民意を鏡のように映し出して劇的に表れた結果と確信します。そのまま受け容れるべきだと思います。

 

あまりにも独善的で聞く耳を持たず、説明も尽くさず、驕ってしまった安倍自民党政権への強烈な批判の結果であることは論を待ちませんが、それだけでしょうか。僕は、既存の政治家、政党全体に対する失望の意味も多分に込められていると受け取っています。自民党はもとより民進党なども含めて、既存の議員や政党の特権的ありようへの批判、そのくせ、社会に横たわるさまざまな問題の解決や将来の不安の払拭への本気度が見えないことへの憤り、これが爆発したのだと思います。

 

何しろ、数多くの東京都民は、政治的実績をほとんど持たない「新しい人々」を議会に送り込む決断をしたのですから。この流れは、米国大統領選挙やフランス大統領選挙やその後の国民議会選挙などと同じ世界的なうねりのようにも感じます。新しく当選させる議員たちが4年間のうちに結果を出せるかどうかは全くの未知数だが、少なくとも今までの政治家たちに継続させるよりも新しい人々に期待するしかない、と多くの都民は考えたに違いありません。それほどに既成政治への信頼は地に落ちているということです。安倍自民党のみならず民進党をはじめとした野党も一括りなのです。

 

僕は東京で約23年間、政治の世界に身を置いていました。1993年の都議選は、渋谷区選挙区の日本新党候補者の選対事務局長をしていました。公認候補22人中20人当選、当時の選挙を振り返ると「既成政党には期待できない」と、大応援の渦が幾重にも生じていたことを今でも鮮明に思い出します。

 

酷暑の中、街頭演説をすれば、無名の候補でも聴衆が囲みました。「冷たいものを飲んで頑張って」と、僕の手に福沢諭吉の札を握らせるご婦人まで現れました。また、候補者とは一面識もない人が「日本新党の党員になった」と電話してきて、ボランティアとして次々と戦列に加わっていきました。私の住んでいた港区では、告示日直前に手を挙げた候補者が、拡声器も持たずに、2-3人で自転車に乗って走り回るだけで当選に至りました。

 

今回の都民ファーストの選挙も、あの時と同じような景色だったのではないかと想像していました。否、結果を見ると、それをはるかに超える都民の期待があったに違いありません。残念ながら、24年前と較べてもさらに、政治は停滞し、そして劣化していると言わざるを得ないのだと思います。

 

小池百合子さんの政治家としてのスタートは、この日本新党でした。僕は一候補者の事務方であり、参議院議員となった小池さんとは全く立場は違いましたが、同じような空気を肌で感じていたはずです。ただ、今回の選挙結果とこれまでの結果の間には、大きな違いがあると僕は思っています。

 

1993年の都議選では、1989年に36人を当選させた社会党議員が14人に激減し、さらに4年後の1997年にはなんと1人になりました。8年で、36人→1人です。

 

その後、時を経て、2009年の都議選では、民主党が54人の議員を擁するに至りますが、2013年には15人に激減し、さらに4年後、今回5人になりました。8年で、54人→5人です。

 

政治の大刷新を期待されるものの、既成の政治から脱却を図ることができず、逆に既成の政治にどっぷり漬かってしまい、有権者に見捨てられた結果です。特に民主党の顛末は、僕も政治の最前線にいたので、裏切りを肌で感じていました。

 

一方、自民党はこの間、時々の浮き沈みはあるものの、一定の支持を受け、安定的な評価を保ってきたといえます。日本新党躍進の1993都議選では2議席増の44議席、民主党54人当選の2009年選挙でも10議席落とすものの38議席は得ていました。しかし、今回とうとう、過去の既成政党が歩んできた道に足を踏み入れてしまったように思います。これまで「お灸をすえられる」ことはあっても、「やはり日本政治に自民党は欠かせない」という長年積み重ねた安心感や信頼感のようなものが、今回崩壊したように僕には見えてなりません。

 

都議選を前にさまざまな疑惑が表面化し、説明と議論を尽くさない強権的姿勢が鮮明となり、さらには「人としてどうか」というような所属議員の言動も次々と明らかになる。政治の劣化を眼前にした東京都民の判断は、当然の結果なのだと思います。

 

そして、選挙を終えて、安心感や信頼感の崩壊の根本原因が露呈していると断ぜざるを得ません。痛烈に批判しなければなりません。それは、「都民の意志表示を直視せず、何ら責任を取ろうとしない政治のありよう」です。これは、自民党のみならず、民進党も同罪です。国民からは「一括り」に見える「既成政治」の姿です。党首の安倍氏も蓮舫氏も、幹事長の二階氏も野田氏も、同じ穴の狢。一地方選挙なのだから中央は責任を取らないなど有り得ない。都議選の最大の争点の一つは、既成政党か新しい勢力かだったのは誰が見ても明らかで、自民も民進も有権者から鉄槌を受けたのですから、この敗北の責任を党首や党執行部がとらずして誰がとるのか。反省は言葉だけだと厳しく糾弾せざるを得ません。これでは信頼される政治が実現するべくもなく、子どもたちにも全く説明がつきません。自らの行動の結果に責任を持つ、なんて教えられないじゃないですか。

 

これから、全く新しい人材が都政の中心に座り、都政を担うことになります。先述したとおり、24年前の日本新党、8年前の民主党も同じような結果の後、当選議員の多くは「せんせい」と呼ばれることに象徴される特異な政治の世界に染まってしまい、結局ほとんど成果を上げられず、都民の期待に背き、消滅していきました。しかし、これも先述のとおり、今回の選挙結果は「もう自民党にも戻らない」という、東京都民の不退転の意志表示のように思います。同じ轍を踏んでしまっては、もはや行き場がありません。

 

僕は、都民ファーストで当選した議員の中に、徹底的な情報公開に本気で取り組める、議員の特権的待遇をすすんで返上できる、天下りをはじめとした役人天国に容赦なくメスを入れられる、政官業の癒着があれば身を挺して対決できる、そんな昔の仲間が何人かいます。

 

逆に、これらに本気で取り組むか疑問の、もっと言えば、役人に取り込まれてしまう恐れのある、さらには役人を懐柔して利益誘導を図る、あるいは特権的待遇にあぐらをかいてしまう、そんな当選者も紛れてしまっているようにも、正直に言って感じています。心配しています。

 

昔の仲間には、改革を牽引する圧倒的な力を発揮してほしいと思っています。そして、東京都民の、ひいては国民の期待に応えてほしいと思います。それだけの力を、選挙を通じて得ています。自信をもって進んでほしいと思います。今回の選挙結果の意味を忘れてしまったような議員は、容赦なく切り捨てて前進してほしいと願っています。

 

僕は、1991年自民党都議の秘書となり、1992年日本新党第一号都議の選挙を手伝い、1993年日本新党都議候補の選対事務局長を務め、同年新党さきがけの最年少代議士の秘書になりました。ここまでは、借金を抱え、4年で大学を卒業できず、就職もできない、ダメ大学生の社会勉強でした。しかし、新党さきがけと出会い、武村正義さんや田中秀征さんと出会い、自民党を出てきた意味とその情熱に触れ、共鳴し、このさきがけの一員として政治に参画したいと初めて思いました。そして、1995年港区議会議員選挙に挑戦し、当選させて頂きました。以来、社会主義者ではない、保守政治の末端に自ら身を置き、本当の保守政治が目指すべき改革を志向し、地方政治に取り組んできました。さきがけなき後は、無所属で地方議員を続け、2004年には自民・民主相乗りの役人出身候補と区長選挙を争いました。この時、自民党と簡単に相乗りし改革を拒む民主党の本質を目の当たりにし、民主党では改革はできないと見切りました。しかし、2009年の衆議院総選挙、かつてのさきがけ同志が民主党執行部に就き、徹底的な行政改革を成し遂げると公約したことを信じ応援。政権交代がなされたものの直後に挫折。国民の圧倒的支持がありながら役人の軍門に下る姿に、愕然としました。そんな時、改革の志を曲げないみんな党に共鳴して入党。この党ならば、地方議会で行政改革に取り組んできた自らの経験を生かせると確信し、今しかないと最初で最後の挑戦と心に決め、区議会議員を辞して国政を目指しました。しかし、衆参ともに落選。23年身を置いた政治の一線から離れました。私が所属した政党は、ともに徹底した行政改革なくして日本の未来なしと旗を掲げてきた新党さきがけとみんなの党。ともに国民の大きな期待を受けながら、我慢できない党内事情により自ら崩壊していきました。

 

繰り返しになりますが、今回の結果は、これまでの有権者の期待とは異質の、いわば最後の期待のような気がしてなりません。これでダメだと絶望につながってしまうような、崖っぷちの期待といいましょうか。だからこそ、そつなくこなしてきた自民党議員を退場させ、政治的な実績はないが新しい人材を多数議会に送り込む選択をされたのではないかと思うのです。当選した都民ファーストの新議員の責任は極めて重大です。

 

過去のしがらみや慣習に全くとらわれず、内部にいるかもしれない守旧的政治家をも振り切って、次々と新機軸を打ち出して下さい。都民ファーストのみならず、国民ファーストな政治の幕を開く役割と責任を担っていることを常に自覚して、ひるまず、恐れず改革して下さい。都民の意志表示である今回の選挙結果とこれだけの議席数があれば、直近の議会から、条例提案をはじめとしたさまざまな制度改革の着手・実現が可能なはずです。一期4年で仕上げる決意で、誤解を恐れず言えば、選挙区の地盤固めを捨ててでも、目に見える改革を切れ目なく続けてほしいと願っています。都知事の顔色をうかがう必要はありません。向いている方向は同じなはず。逆に、都知事を引きずり込むような大きな嵐を起こしてほしいと願っています。

 

心より期待しています。七夕の短冊に願いを込めて。

農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)

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