安倍長期政権の終わり方〈山崎拓氏インタビューを読んで〉

 

こさいたろうの視点・論点 0124

2020/01/07

 

安倍長期政権の終わり方〈山崎拓氏インタビューを読んで〉

 

先日、ネットで山崎拓氏のインタビュー記事が目に留まりました。もともとは自民党の重鎮だった氏は、昨今の政治のありようを憂い、安倍政権への批判を強めているようで、注目していました。今回は、このインタビュー記事の中から、僕が気になったところを紹介し、論評を加えてみたいと思います。山崎氏の発言は、要旨・抜粋させて頂きました。

 

「レガシーなき長期政権」

山崎氏発言:憲政史上最長とはいいながら主だった功績はない。アベノミクスはデフレ脱却を実現できず、北方領土交渉は膠着状態、公約した拉致問題は未解決のまま、憲法改正も迷走状態です。

 

政策的な実績を振り返ってみると、そうなんですよね。安倍首相を支持する人たちは、経済の好調さや米国と良好な関係を維持できていることを評価しているようですが、大きな仕事を成し遂げている感じはしません。また、安倍首相自身がよく言うように、民主党政権と比べれば比較できないほどかもしれませんが、それは比較対象がダメすぎたからにすぎません。僕は、「日本がどんな国を目指すのか」という明確な方向を、安倍首相や自民党が明確に示していないことが、レガシーを生み出せない最大原因だと思います。これだけ長く政権を担っているのに。それは国民自身の課題でもあります。主権者として、政治家たちに、「我々は何を目指すべきなのか、を示せ!」と強烈に求めるべき時代が到来している、そんな歴史的転換点に世界はあるのではないでしょうか。

 

「俗な官僚に主導されています」

山崎氏発言:〈中曽根政権と比較して〉「官邸主導」の意味が真逆です。中曽根総理は土光臨調に象徴されるように、あくまでも民間の有識者の英知を活かして官僚を主導しました。しかし、… 安倍総理は官僚を使うのではなく、面従腹背の官僚に使われているようにしか見えない。

 

政治が、目指すべき国家像を示せないと、こうなります。どういう国をつくるのか、という一番大事な役割を官僚が担うことになります。役人は、実務能力にはとても長けていますが、国家の大方針を決める立場にはありません。あくまで、国民が選挙で選ぶ政治家がその役割を担うのが、民主主義国家のゆるぎない大原則です。たとえば、「一億総活躍社会」などというスローガン。まあ、みんなが活躍できる社会をつくろうよ、という意味ではだれも反対はしませんが、「一億…」なんて言う表現は全体主義的だし、もっとこなれた言い方はないの、っていうのが率直な感想です。誰も反対できない、でも上から目線なスローガンを臆面もなく打ち出せるのが、役人主導の証左だと僕は思います。役人にとっては、「みんなが反対しない」が重要なのです。それで、自分たちの仕事を無限に広げることができるから。それを簡単に受け入れて、「一億総活躍社会をつくります」なんて演説している政治家を見ると、山崎氏の言う、「面従腹背の官僚に使われているようにしか見えない」に同感せざるを得ません。

 

「世襲主義」

山崎氏発言:戦後政治を振り返ると、そこには戦前から続く官僚主義と、戦後に始まった草の根民主主義という二つの潮流がありました。戦後政治の底流には、エリートと叩き上げ、そのどちらが日本を引っ張っていくのかという主導権争いがあったのです。ところが、現在の安倍政権はエリート主義でも草の根主義でもなく、いわば世襲主義です。エリートでもなければ叩き上げでもないボンボンが日本を引っ張っているという状況は、これまでになかったことです。

 

国会議員の1/4が世襲といわれていて、2014年の総選挙では、自民党候補の約70%が世襲候補だったそうです。世襲議員を全否定するつもりはありませんが、実力以上に下駄を履いているのは事実。参入の障壁があまりに高すぎるために、日本にたくさんいるはずの優秀な人材が政治に流入せず、しっかりした能力評価をせず世襲議員に政治を任せる結果になってしまっている印象です。世襲議員の最大の弱点は、自らの人生を通じて自前の志を有していないことではないかと思うのです。安倍首相がやりたいと言っている「憲法改正」も、実は「おじいちゃんの志」と思ってしまうのは私だけでしょうか。安倍首相から、何を目指し、憲法のどこを、まさに今、変えねばならないのだ、という「志」が伝わってこないのがその証左です。

 

「小選挙区制の弊害」

 

山崎氏発言:中選挙区制では無所属非公認でも選挙に出て、当選することもできました。私自身、1972年の初当選時は無所属でした。しかし現在の小選挙区制では無所属非公認では選挙に出られない。出ても当選できない。昔は志さえあればチャンスを作れたが、今は志がないし、あってもチャンスが作れない。その結果、地盤・看板・鞄はあるが志のない世襲議員が増えていき、自民党の質が著しく劣化している。「自分は生まれながらに政治エリートになる資格がある」と勝手に思い込んで出てくる人間ばかりで、安倍という権力者にしがみつくだけの政治家群像になってしまった。

 

政治劣化の根源、僕もここにあると思います。僕の年齢だと、中選挙区制の弊害の時代も辛うじて知っており、中選挙区制に戻すかどうかは別にして、小選挙区制は即刻やめるべきと強く思っています。このままでは有為な人材供給がなされません。公認してくれる政党幹部の顔色ばかり窺い、国民に目を向けない政治家ばかりになってしまいます。少なくとも議席数は、国民の投票に基づき比例配分される制度にすべきと考えます。それが、民意を鏡のように反映する唯一の方法です。

 

山崎氏はこの後、インタビュアーの「小選挙区制度の弊害は明らかです。この制度は変えるべきだと思います。」の問いに、「それはその通りですが、現実的ではないと思います。小選挙区制で当選している議員に選挙制度を変えるモチベーションはないですからね。」と述べています。

 

これは、僕は違うと思います。選挙制度を変えることが日本の未来を大議論するスタートになる、ということを国民に強く伝え、それを公約する政治勢力が選挙で信を問えばよいのです。政界のみならず、各界の多くの識者が、小選挙区制度の弊害を指摘している今、国会議員にモチベーションがないからと言って、選挙制度改革をあきらめていいのでしょうか。国民の本気度が問われていると思います。

 

農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)

     

 

 

 

 

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