必要なのは選択できること〈この秋からの幼保無償化は正しいのか〉

 

こさいたろうの視点・論点 0120

2019/12/10

 

 

必要なのは選択できること〈この秋からの幼保無償化は正しいのか〉

 

 

この10月から「幼児教育・保育の無償化」がスタートしました。内閣府のホームページには、「幼稚園、保育所、認定こども園などを利用する3歳から5歳児クラスの子供たち、 住民税非課税世帯の0歳から2歳児クラスまでの子供たちの利用料が無料になります」と書かれています。

 

多くの保護者は歓迎しているものと思います。保育園や幼稚園の保育料がタダになるわけですから。僕も、その年齢の子どもを持つ身なら、少しでも家計の負担を軽くできるという意味で、とても有難いと思うと思います。というか、思います、絶対に。ただ、深く考えてみると、ここに欺瞞といいますか、ある種の仕掛けがあるようにも思います。

 

タダになるのは嬉しんですけれど、それは誰かが無償労働をするようになったわけではなく、自分で出していた分を誰かが肩代わりしているわけですね。つまり、税金で。誰かは自分の場合もありますね。足りなくなれば、どこからかお金を持ってくる必要があるわけですね。税金を上げて。例えば、消費税の増税とか。

 

まず、そこのところをよく考える、というか忘れてはならないと思います。タダとは、タダでないということ。さらに言えば、年収360万円未満世帯の例外、第3子以降の子たちの例外、住民税非課税世帯の0-2歳児の例外等々、相当煩雑な事務作業が発生するはず。施設と地方自治体のやり取り、自治体と国のやり取りは複雑化、相当な行政事務経費が掛かることが想定されます。

 

僕は、もっともっと十分に検討すべき政策だったのではないかと思っています。消費税増税とセットで、増税の負担感を軽減させるためだけに、無理やり、急ぎ足で導入が決まったのだと思っています。どういう日本国を目指すための「幼保無償化」なのか、僕には見えないんです。タダにすれば嬉しいでしょ、っていう感じしか受けないのです。

 

この「幼保無償化」の政策によって、その恩恵を受けるには役所の認可など、実質的なお墨付きが必要になります。今の政治や行政には認められなくても、利用者に支持され独自の教育や保育をする施設やサークルは存続しにくくなる懸念があります。報道によれば、実際に影響が出ているようでもあります。

 

独自の取り組みをする教育や保育の中から、普遍性を持つ方法が生まれることが多いことは歴史が証明しています。例えば、シュタイナー教育のよいところを公教育が取り入れたり、オランダの公教育で普及しているのイエナプランはもともとドイツで実験的に始まった教育モデルでした。

 

僕は、教育を選ぶのは利用者であるべきだと確信しています。役所が一律にお墨付きを与えるものではないと思います。多様な教育を多様な国民が支え、多様な人材が活躍する社会を目指す、そんな未来の日本の姿を僕は夢見ます。だから、保育園や幼稚園、学校は、利用者が、つまり保護者が、子どもが選ぶのが最も望ましいと思うのです。

 

はっきりいうと、今回導入された「幼保無償化」の制度は、幼稚園や保育園を役所の支配下に置くような制度のように僕には見えてしまいます。高等学校も無償化により同じようになることで、日本の子どもの育ちの環境が一貫して「単色」になってしまうような気がしてなりません。多様な色彩が消えていくような気がするのです。

 

難しいことはありません。子どもたち一人一人に「利用券」のようなもの(バウチャーという)を渡せばいいのです。日本国民には等しく同じ価値のものを。それを使って、生きたい、行かせたい施設、共感できる教育などを選べばいいのです。幼稚園や保育園、学校はそのバウチャーを集めて、保育や教育活動を行えばいいのです。

 

極めて公平です。ホームスクールも可能です。集まらなければ、運営はできません。役所は、最低限の基準を満たしているかどうかのみチェックすればいいのです。僕が考える「選択する教育・保育」です。この秋からの制度とは似て非なるものです。

 

ネットで調べると、同じような思想性で活動している組織もあるようです。単にタダにするのではない、選べる教育・保育という社会を実現することはできるでしょうか。これから、国民に問われます。

 

 

農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)

 

     

 

 

 

 

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