追悼 井出正一さん

 

こさいたろうの視点・論点 0065

2018/09/15

 

追悼 井出正一さん

 

井出正一さんが旅立たれた。ご存知ない方もあるかもしれないので、以下、東信ジャーナルの記事を引用させて頂く。

 

(以下、東信ジャーナル訃報記事より)

新党さきがけ代表や厚生大臣を務めた元衆議院議員、井出正一(いで しょういち)氏=佐久市臼田(旧臼田町)出身=が、2日午前6時56分、佐久市の佐久医療センターで呼吸不全のため死去した。先月より体調を崩し同病院に入院していた。79歳。通夜は近親者のみで5日午後6時、佐久市臼田620の2の自宅。

葬儀告別式は17日午後1時、佐久市営武道館(佐久市中込2941)で、井出家と橘倉酒造合同葬。喪主は長男の太(ふとし)さんと、二男の平(たいら)さん。葬儀委員長は栁田清二(やなぎだ せいじ)佐久市市長。

井出氏は昭和14年6月20日、農林大臣、郵政大臣、内閣官房長官を歴任した衆院議員、井出一太郎氏の長男として誕生。現衆議院議員の井出庸生氏の叔父で、小諸市の元参院議員・衆院議員、小諸市長等の小山邦太郎氏は祖父。栁田佐久市長、小泉俊博小諸市長は井出氏の秘書を務めた。

慶応義塾大学経済学部卒、同大学院修了。昭和61年に自民党の衆院議員で初当選し、3期10年。平成5年に自民党を離党して3期目は新党さきがけで当選。同6年夏から村山内閣で13カ月、厚生大臣を務めた。党代表になり同8年の衆院選は、中選挙区制から小選挙区比例代表並立制になり、小選挙区では新進党の羽田孜氏に敗れ、比例復活できずに落選、同10年の参院選でも落選した。

家業の橘倉酒造で代表取締役会長を務め、平成14年から長野県日中友好協会長を同27年まで務めた。

(引用終わり)

 

私は、大学在学中に東京都議会議員の秘書や選対事務局長を経験した後、結党直後の新党さきがけに所属する代議士の秘書となった。自ら政治家を志すこととなった原点が、新党さきがけだった。

 

井出正一さんは、この新党さきがけの結党メンバーだった。自民党から飛び出した10人の代議士たちの一人だった。私は事務方の末席も末席に座っていただけだったが、新しい日本を作ろうとする姿は眩しかった。

 

当時、冷戦体制の終焉、バブル経済の崩壊、国内外で社会秩序の激変が始まっていた。日本の政界は新たな針路を指し示すことができず、むしろリクルート事件をはじめとする政治とカネ問題で迷走していた。

 

そんな状況を打ち破らねばならないと思う同志が自民党を離党し、結集した。中選挙区制度下、父親から受け継いだ固い地盤を持つ井出さんは、自民党にいればまず当選は間違いない環境にあった。

 

自らの保身を捨て、あえて荒波に打って出たのが井出さんはじめさきがけのチャーターメンバーだった。38年にわたる自民党一党支配を終わらせ、新たな政治の幕を開いた功績は極めて大きい。

 

しかし、その後の新党さきがけは順風満帆とはいかず、小選挙区制度の導入が引き金となり起きた政党の離合集散の動きに埋没していく。多くの国会議員、地方議員が党を離れていく中、私は党に残った。

 

そして、衆院選前夜、党代表となった井出さんを、東京支部所属の私が代表室に訪ねた。東京ブロックで比例代表候補を絶対に擁立すべきと要請するために。

 

当時、東京選出の代議士が一人党に残っていたが、新しくできる民主党の推薦を得る代わりに新党さきがけが東京で比例候補を出さないということを、さきがけから民主党に移った菅直人氏と約束していた。

 

それはどうしても納得できない。井出さんへの直談判だった。代表室で湯呑に酒を注ぎ差し出してくれた井出さんは「小斉君、僕も同じ思いだ」と言ってくれた。生意気な若僧に対してこの時も、この後も分け隔てなく接してくれた。

 

結局、東京で比例候補は出せず、さきがけは2議席に。井出さんも落選された。次の参院選で再起を期したが届かなかった。そして、「さきがけは終の棲家である」とおっしゃって、静かに政界を引退された。

 

引退後も、常に私のことを気にかけて頂いた。無謀ともいえる挑戦にあたっても、いつも激励の言葉を贈って下さった。私が背水の陣と定めて戦った参院選の時に送っていただいた色紙にはこうあった。

 

さきがけの志をば掲げつつ 弓張り給へ 鹿を逐へ君

 

政治家としての原点が「さきがけ」にあるということを改めて思い出させて下さった。土地に根ざし、常に少数意見に耳を傾け、平和を志向し続ける井出さんの姿勢。まさにさきがけであり、僕が理想とする良識ある保守政治家の姿だった。

 

今も私の盟友である、井出正一門下で現佐久市長の柳田清二君のおかげで、出棺前、先生と最後のお別れをすることができた。目を覚まして「小斉君」と声をかけてくれそうな、眠っているようなお顔だった。

 

先生、ありがとうございました。私は、さきがけの志を忘れることなく、山あり谷ありの人生を歩み続けて参ります。

 

合掌

 

農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)

 

 

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