議事録を残すこと

 

こさいたろうの視点・論点 0143

2020/06/07

 

議事録を残すこと

 

  • 政府は3月、行政文書管理ガイドラインに基づき、コロナ対応を「歴史的緊急事態」に初めて指定。将来の教訓として公文書管理を徹底すると決定した。安倍晋三首相は「適切に、検証可能なように文書を作成、保存している」と強調していた。(秋田魁新報社説より:6/6)

 

しかし、新型コロナウイルス対策専門家会議について、議事概要があるのみで議事録は作成されていなかった。僕は、政府の文言の定義を知らなかったが、議事概要とは発言者が特定されず、結論に至るプロセスを追えないものらしい。

 

  • 専門家会議メンバーも議事録の作成、公開に肯定的だ。尾身氏は「政府が決めて(発言者の)名前を出すなら全然問題ない」、他のメンバーも「議事録の有無にかかわらず、自由な議論をしなかったことはない」「誰がどういう発言をしたか責任を持ちたい」と明言している。(同上)

 

にもかかわらず、加藤勝信厚労相は議事録を作成しない理由について、「自由かつ率直に意見してもらうため」と説明したという。この政権は、すべての国政運営が国民の負託を受けて行われているという認識が薄すぎる。その重要性の認識がまるでないと指摘せざるを得ない。首相が、「適切に、検証可能なように文書を作成、保存している」と発言をしても、その言葉はまるで重んじられない。そもそも、首相の本気度を役人に見透かされているともいえる。

 

  • 菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、記者団が「政府の専門家会議で議事録が作成されておらず、こうした消極的な姿勢で後世の検証にたり得るのか」と質問したのに対し、「専門家会議は、ガイドラインの『政策の決定または了解を行わない会議』に該当する」と述べ、議事録を作成していないことを明らかにしました。そのうえで「専門家に自由かつ率直に議論していただくために、発言者は特定されない形だが、議事概要は作成して公表している」と述べ、ガイドラインに沿って、適切に対応しているという認識を示しました。(NHK NEWS WEBより:5/29)

 

菅官房長官は、議事録作成が必要ではないかという声が高まってきたにもかかわらず、議事録不要を明言していることになる。僕は、安倍政権のこの体質は致命的だと断じたい。森友事件にかかわる公文書改ざんも、桜を見る会の推薦名簿加工も、厚労省不正統計問題も、根っこは同じ。

 

僕が地方政治にかかわっている時も、議事録を残すかどうか、ことあるごとに役所とやりあったことを思い出す。政策決定過程をなるべく記録に残さないことで、後から責任を問われにくくするようにする役人のサガのようなものを感じたことを覚えている。でも、先述の通り、政治は主権者である国民からの負託を受けて行われている。その情報はすべて主権者のものと肝に銘じなければならない。行政の持つ情報は「原則公開」が大前提なのだ。「どこまで公開するか」ではなく、「公開しない例外はどこか」という視点で語られなければならない。

 

コロナ禍という緊急事態時において、「ちょっとおかしいな」と思いながら記録を軽視する政権を野放しにしてきてしまったツケは、国民が払わねばならない。4月7日の記者会見。イタリア人記者の「失敗したらどういう風に責任を取りますか?」との質問に対し、安倍首相は「例えば最悪の事態になった場合、私が責任を取ればいいというわけではありません」と答えた。責任を負う気がない人だから、記録にも無頓着でいられるのではないか。

 

今からでも省みて、まともな政治を取り戻す努力をしなければならないのだと感じる。

 

 

農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)