「政治的素人」に国政を託すウクライナを見て考える

 

こさいたろうの視点・論点 0107

2019/08/29

 

 

「政治的素人」に国政を託すウクライナを見て考える

 

 

ウクライナの最高会議(日本の国会に相当)選挙の開票結果を伝える記事を、ネットニュースで目にした。4月に新大統領となったゼレンスキ―氏の率いる「国民の奉仕者」という新党が、なんと「現有議席ゼロ」から単独過半数を大きく上回る議席(定数450のうち254)を獲得したという。無血革命の様相だ。

 

ゼレンスキ―大統領はコメディー俳優。テレビドラマで、高校教師が不正や腐敗と戦う中で大統領に転身するという主人公を演じ、そのイメージそのままに、大統領候補に名乗りを上げたそうだ。そのようなシナリオが当初から用意されていたのかどうかは定かではないが、いずれにしても、政治経験はなく、いわば「政治的素人」だったことに間違いはない。

 

ウクライナ国民はまず、この「素人」を圧倒的票数(決選投票で73.2%)で大統領に選んだ。そして、続いて、いわゆる国会議員の選挙でも、「素人」が率いる議席ゼロだった「新党」に自国の舵取りを任せる決定を下したのである。

 

     

私は、ウクライナの国情を詳しく知るものではない。ただ、調べてみると、ゼレンスキ―大統領誕生の背景には、それなりの理由があったようだ。

 

「オリガルヒ」と呼ばれる新興財閥の領袖が政治・経済の私物化と、腐敗の拡大。政権幹部による軍備関連の汚職の露見。にもかかわらず、家庭用ガス料金の値上げという国民負担の増大。「一部のエリートだけが良い思いをして、我々の生活は苦しくなる一方だ」との不満が鬱積していたという。

 

さらに、国家の存立に重大な影響を及ぼす「ロシアとの距離感」について、ポロシェンコ前政権の、反ロシア・ナショナリズム一辺倒、ロシアを仮想敵と位置付ける国政運営に、国民の多くが危機感を感じていたようだ。

 

つまり、特権階級の不正・腐敗の追及、一掃にとどまらず、自国の針路、行き先という国政の根幹部分について、多くの国民は前政権にNOを突き付けたと言える。そして、それは、大統領という、いわばシンボルの交代にとどまらず、閣僚人事の承認や経済政策で強い権限を持つ議会においても過半数を与えることで、国民の意志を明確に示したと言えるだろう。

 

ゼレンスキ―氏が大統領選を制した後、識者の論評をネット検索してみると、「お笑いタレントは早晩馬脚を露す」「議会に足場のない大統領は何もできない」などと心配、というか悪口が散見された。しかし、実際には、大統領新党が議会の多数を握った。否、国民が握らせたのである。

 

ゼレンスキー大統領は議会選の勝利で政権基盤を固め、今後は紛争の解決に向けたロシアとの交渉や汚職対策を本格化させる、と報じられている。さらに、「古い勢力とは連立を組まない」と表明し、首相には過去に首相や議長などを経験していない人物で、経済の専門家から選ぶ方針を示している、という。

 

ウクライナという国では、2004年のオレンジ革命、2014年の政変、国民の怒りがうねりとなり大規模な体制転換が図られてきた歴史がある。それだけ、権力の不正、腐敗は根深いものがあるのだと思うが、ゼレンスキ―氏と氏の率いる政党という「政治的素人」の成功を、私は期待したいと思う。

 

わが国・日本には、「政治的素人」の登場が必要とされる局面は訪れるだろうか。権力の固定化が続くなら、そのような局面はやってくると思う。さらには、いよいよ日本の針路を国民自身が考えねばならない今、既存の人材に任せておくべきなのだろうかとも思う。

 

いずれにしても、私は、極めて有能な「政治的素人」は、日本にたくさん存在していると確信している。

 

 

 

農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)

 

 

 

 

 

 

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