明治150年に思う 〈礼賛ではなく、省みることの必要性〉

 

こさいたろうの視点・論点 0035

2018/01/30

 

明治150年に思う 〈礼賛ではなく、省みることの必要性〉

 

政府の「明治150年」関連施策各府省庁連絡会議/内閣官房「明治150年」関連施策推進室ホームページには、次のような記載があります。

 

〈 「明治150年」に向けた関連施策の推進について平成30年(2018年)は、明治元年(1868年)から起算して満150年の年に当たります。明治150年をきっかけとして、明治以降の歩みを次世代に遺すことや、明治の精神に学び、日本の強みを再認識することは、大変重要なことです。このため、「明治150年」に向けた関連施策を推進することとなりました。〉

 

これを受けて、多額の予算を投じ、全国各地でさまざまな取り組みがなされているようです。また、安倍首相は1月22日の施政方針演説で「明治という新しい時代が育てたあまたの人材が、技術優位の欧米諸国が迫る『国難』とも呼ぶべき危機の中で、我が国が急速に近代化を遂げる原動力となった」と明治維新を礼賛しています。

 

でも、明治維新の功績はゼロとはいわないまでも、省みなければならないことの方が多くあるのではないかと思うのです。「明治の精神に学び」「日本の強みを再認識する」ということでなく、負の側面を直視し、未来の日本のための変革に繋げていくことこそ重要だと思います。

 

太平洋戦争では、日本は破滅的な危機でした。もし、当時の軍部が主張していたように、玉砕、本土決戦まで駒が進んでいれば、今の日本は存在していなかったことと思います。この最終決戦とも称された悲惨な戦争の源流は、明治維新にあったともいえると思います。

 

遅れてきた帝国主義国家、統帥権を政府から独立させ軍事優先国家を作った長州藩閥政治。「蝦夷を開墾し、カムチャツカ・オホーツクを奪い、琉球を参勤させ、朝鮮を攻めて朝貢させ、満州の地を割き、台湾・ルソンを収め、漸次進取の勢いを示せ」と海外侵略の必要性を説いた吉田松陰の薫陶を受けた維新の志士といわれる人たちが、革命によって権力を奪取し、その後、明治以降の日本は、松蔭の薫陶が具現化されていきました。北海道開拓、樺太領有、琉球処分、台湾・朝鮮植民地化、満州事変、フィリピン占領。ぴったり符合します。

 

天皇を神格化し、その権威を利用する政治風土を醸成してきたことも、触れない訳には行きません。そもそも、明治維新自体、内戦必至だったかどうか議論の分かれるところです。薩長の下級武士たちが権力を奪取するために天皇を利用して引き起こしたものともいえます。したがって、権力奪取後の国づくりも、必然、天皇の権威を利用することとなりました。革命で権力を奪った田舎侍が、その権力を維持するために天皇を頂点とする新たなヒエラルキーを作った訳です。天皇の軍隊、天皇の官吏、政治権力を巧みに天皇と繋げて、その権威を維持しようとしました。

 

戦争に負け、表面上は主権在民の日本国憲法ができましたが、明治以降に醸成された風土は一朝一夕で変わるものではなく、現代社会にも根強く残っているのではないでしょうか。天皇から与えられる勲章、未だに役人に手厚いのもその一つの残滓かと思います。

 

明治150年、本当にこのような風土が続くことが日本にとって望ましいのか、考える機会にすべきではないでしょうか。

 

中央主権的な国家体制も、明治期に作られた体制です。今でこそ県知事は選挙で選ばれますが、中央省庁の役人が就くことが少なくありません。戦前、天皇の官吏が各県に派遣されて知事職に就いていた流れと思います。国が自治権を制約し、地方自治をコントロールしている実態が未だに残っていることを表していると言えます。本当にこのままでよいのか、明治150年を契機として、改めて考えるべきではないでしょうか。

 

明治50年の時、長州軍閥の代表格、寺内正毅が首相でした。明治100年は、同じく長州出身の佐藤栄作が首相。そして、本年、明治150年も、長州が故郷の安倍晋三首相で迎えることとなりました。薩長史観という言葉があるそうです。いわば、戊辰戦争で勝利した勝者の歴史観。その方向から見れば、「明治の精神に学び、日本の強みを再認識する」ということになるのかもしれません。しかし、そこには、日本を破滅寸前まで追いやった負の側面があることを忘れてはいけないと思うのです。政府が大々的に「明治150年キャンペーン」を行なおうとしているのを横目に見ながら、明治維新の失敗に学んでみたいという思いをさらに強くしている今日この頃です。

 

農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)

 

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