移民政策の解禁の前にやるべきこと

 

こさいたろうの視点・論点 0074

2018/12/03

 

 

移民政策の解禁の前にやるべきこと

 

 

農業の現場に身を置いて6年目になるが、「技能実習生」は農業現場にいるとしばしば耳にする単語だった。

 

以前、労務者として農業生産法人で働いているときには、友好関係にあった千葉の農家の皆さんの農場には、たくさんの「技能実習生」が働いていた。詳しく話を聞いたことはないが、主に東南アジア方面から来ている様子だった。

 

僕が見聞きした受け入れ先は、皆さんまじめな農業経営者で、今問題になっているような「最低賃金以下で働かせる」とか「労働環境が劣悪で失踪してしまう」といったこととは全くの無縁だったと確信している。

 

ただ、実態は「技能実習」ということでなく「労働」であることに間違いないと感じていた。働いてお金を稼いで、母国の貧しい家族の生活を支える。詳しい制度を知らない人でも、薄々わかっていることではないのか。

 

「移民政策はとらない」という建前を維持しつつ、単純労働の労働力としての外国人は確保したい、という大矛盾を正当化させるために「技能実習生」という制度を作り、「労働させているのではない」と偽ってきたこの数十年。この著しい矛盾と偽りの総括なくして、単純労働力が足りないという経済界の要請のみをもって、なし崩し的に移民政策を解禁してしまってよいのだろうか。

 

 

私は、農業に関わるようになったこの数年の間に、以下のような経験もした。

 

ある時、ある外国人を紹介された。農業現場に労働力不足はないか。必要に応じて外国人を「技能実習生」として送り込むことができる。そんな話だった。

 

かの国にはエージェントがあり、日本で働きたい希望者を集め、かなり多額の手数料等を支払い、日本語などの研修を受けた上で日本に来るのだという。日本でも日本のエージェントの下で一定の研修をして、働き先に引き渡されることになる。

 

「外国人技能実習生」は、給料から生活費を引いたお金が手元に残ることになる。それでも貨幣価値に差があるので、3年も働けばまあまあの金額が手元に残るらしい。しかし、最初に支払う多額のお金は、ほとんどの場合ほうぼうから借金して捻出しているようで、そのお金も返さなければならない。だから、どんなに苦しくても、時には人権が踏みにじられるような労働環境でも、簡単にやめたり逃げ出したりすることはできないのだ。

 

私が知らないだけで、制度の本旨に基づいた「技能実習」が行われている事例もあるのかもしれないが、果たして実態はどうなのか。私は、私が見聞きした事例がほとんどではないかと思ってしまう。

 

実習生を集めるエージェント、受け入れ先を探すエージェント、これらが金儲けを目的として存在していて、その儲けのほとんどは貧しい外国人研修生の懐から出ているお金という仕組み。

 

もう「技能実習」などという被り物は面倒だから脱いでしまえ。実態通りに「単純労働者」として受け入れられるようにしよう。エージェントも大手を振って金儲けしよう。そういうことではないのだろうか。

 

この度の入管法改正は、制限付きとはいえ「移民政策」の実質的解禁で、単純労働に外国人を充てることができるようにするものだ。国会審議でも幾多の問題点が指摘されているが、とにかく法律を通した後、政省令で対応するの一点張り。

 

これまでの国策を大きく変える制度改変であるのだから、じっくり時間をかけ、基本的ルールを法律に記載し、国権の最高機関たる国会にきちんと責任を果たさせる必要がある。

 

私は、外国人の人々が日本に働きに来ることに反対ではないが、きちんと受け入れるための準備は、じっくり時間をかけて行うべきだと思っている。単純労働を安い賃金で外国人にやらせる、というような差別的意識を醸成させるような社会を、まずは変えねばいけないのではないか。そう思っている。

 

農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)

 

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