角界と政界の相似点

 

こさいたろうの視点・論点 0068

2018/10/12

 

 

角界と政界の相似点

 

 

貴乃花親方が相撲界を去るということが大きなニュースになっている。これまでの顛末を見ていると、貴乃花の挙動もおかしなところがたくさんあるし、相撲協会執行部の側も思い通りに動かない貴乃花を陰湿にいじめているようにも見える。つまり、相撲という狭小な世界の中でのいわば「幼いいざこざ」に過ぎないと僕は思う。

 

こういういざこざ、権力争いのようなことはどんな組織にもあるとは思うし、これまでの大相撲界でもあったに違いない。これだけの問題として取り上げられるのは、日本相撲協会が公益財団法人となったことも理由であろう。日本相撲協会は公益法人に相応しいのか、公益法人でなければならないのか、と常々疑問を抱いている。

 

 

 

江戸時代以前の相撲の歴史には詳しくないが、少なくとも明治以降、相撲部屋が力士を抱え、親方衆が一問を作り、合議制的な組織として運営してきたのが大相撲だと思う。各地に勧進元がいて、全国で興行する。力士や部屋にはタニマチがついて下支えをした。

 

そもそも興行だったから、時には八百長もあったはずだ。私が子どもの頃、千秋楽に七勝七敗同士の力士が対戦することはほとんどなかったと記憶している。相撲界に近しかった私の父は、テレビを見ながら「これはごっちゃん相撲だよ」なんて子ども相手に物知り顔で語っていた。でも、おそらく、それは本当にあることだったのだと私は思う。

 

それが大相撲、と多くの人が思っていればそれでいいのではないだろうか。無理に、五輪競技のような「スポーツ」と同じに考える必要があるのだろうか。むしろ、同じになんて考えられないはずだ。神事と深く結びつき、文化や伝統を継承している特別な存在だという向きもあるが、歌舞伎はどうなのか。松竹という民間企業が運営しているではないか。

 

貴乃花問題だけでなく、お粗末ともいえる不祥事が次々と明るみに出る日本相撲協会。公益法人化による権力の集中が問題の根源にあるように思えてならない。つまり、一国一城の主であった親方が実質的に協会に雇われるような形になり、いわばサラリーマン化してしまったことが問題だと感じるのだ。

 

昔は、百八しかない親方株を引退後に取得するには多額のカネが必要だったと聞く。そのころの親方は、その金を工面し、タニマチを集め、弟子を探し、部屋を運営しなければならなかったわけだ。その親方たちが集まって協会を作り、興行を打っていた。まさに、立派な事業主の集まりである。

 

しかし、今は、人も金も情報もあらゆるものが協会中枢に集まるようになり、相撲取りは現役を終えた後には、新たな出世競争をするようになる。事業主が集まる業界団体の出世競争と、サラリーマンの会社内の出世競争では、競争の内容や性格は全く違うはずだ。角界は、後者に変質してしまったように見える。

 

数十億円とも言われるNHKからの放映権料収入を中心に、巨大な利権がそこにはある。そんな中、公益法人として運営するのであれば、理事会の構成メンバーのほとんどが親方衆という旧態依然の形ではダメだと思う。逆にそうしたいのであれば、公益法人など返上し、昔のように親方衆が寄り合い運営していくべきだ。税金もきちんと払う形で。

 

そういえば、この20年ほどの間に、相撲の世界と同じような変化をした世界があることに気付いた。永田町だ。昔は政治家自らが活動するための金集めをしていたものが、政党助成金制度ができて税金が各政党に配られることとなり、それを政党幹部の差配で政治家末端に配られるようになった。

 

これによって、一国一城の主であった政治家・議員は、政党という名の会社に所属する社員のようになってしまった。幹部・役員の顔色をうかがい、社内での出世が何より大事になってしまった。本来は主権者に顔を向けて政治に携わることが当然だが、それが大きく変貌してしまっている。社会のダイナミズムが損なわれている大きな理由だと思う。

 

角界にも政界にも、保身や利権を打ち破り、日本社会のための真の改革を目指す人材が出てくることを望む。

 

 

農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)

 

 

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