増税の前にやるべきことがあるだろう!

 

こさいたろうの視点・論点 0069

2018/10/20

 

 

増税の前にやるべきことがあるだろう!

 

 

五、六年前まで、私は街頭で、会合で、毎日のように叫んでいたフレーズだ。高すぎる公務員人件費を削る、特別会計に眠る資産を切り崩す、借金が前提の国家予算の構造を変える、規制改革を通じて経済を活性化させ税収を上げる…。などなど、国民にさらなる負担を求める前にやるべきことがある、という主張だった。

 

しかし、私は戦いに負け、政治の一線から退場した。当時、自民党と民主党の二大勢力が手を結び、国会議員の定数削減と早期解散の検討いう極めて矮小化された取引条件で、消費税増税を約束した。行政改革、歳出構造改革、規制改革による経済活性化、本当に必要な処方箋は隅に追いやられた。

 

その後、自民党・民主党は同じ約束をしたものの、失政のみを積み重ねた民主党は下野し、安倍自民党が与党に返り咲いた。各種の経済指標は好転し、アベノミクスと称した経済関連政策は功を奏した、ように見える。が、実態は、即効性の高い安易な金融緩和と巨大な財政出動の一時的な成果でしかない。

 

税収は上がったが、予算の歳出規模は拡大し続けており、借金は増え続けている。借金を返し、福祉や社会保障の水準を維持するためには、増税せざるを得ないのか。私は今でも、増税の前にやらなきゃならないことがある、と確信している。そして、それは、民主党政権でも、安倍自民党の長期政権ではなおさら、やられていないのだ。

 

一言で言えば、徹底的な行政改革。政府資産の整理から天下りの全面禁止。財源・権限を合わせて移譲する徹底的な地方分権。公務員総人件費の抑制。税収に見合った予算編成。不要不急の事業の廃止、中止。予算規模の大幅縮小。こういったことをやらずして増税をすれば、カネはまた必ず足りなくなる。

 

手元にあれば使ってしまう。簡単に貸してくれる人があれば借りてしまう。一度味わったレベルから生活水準を落とすのは極めて困難。自分たちに当てはめても、人間そんなものだ。そうでない意志の強い御仁もいらっしゃるとは思うが、僕はそう強くない。政治や行政も同じだと、私は経験から思う。

 

現に、日本国の財政法4条では「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない」と、国債発行を原則禁止している。しかし、時の政府与党は1965年に初めて、1975年からほぼ毎年、特例法を作り、赤字国債を発行し続けている。

 

大本のルールを都合よく変えて、借金をすることで国家財政を成り立たせている。さらに現状では、その国債の多くは、日銀がお札を刷って引き受けている。一時的な政策としてはありうべきとは思うものの、歯止めも出口もないのが非常に危うい。先述のとおり人は、心地のいいところから抜け出すのは容易ではない。

 

増税の前に、借金体質にどっぷり漬かった行政のありようを正す必要があるはずだ。役人や政治家、それを取り巻く人たちだけが心地いいと感じるところこそに、まずメスを入れるべきではないのか。それをまったくやらないで、増税をやらせてはいけない。

 

 

 

10月15日、安倍首相は臨時閣議で、来年10月からの消費税の10%への増税を表明した。当初の目的としては、財政再建のため、だったものが、医療や介護・年金など社会保障制度の維持のためとも言われ、しまいには幼児教育無償化なども加わり、本当に増税2%分でそんなことができるのか。

 

いや、増税すればできるかどうかという議論に嵌ってはならない。そもそも、国家財政の現状、簡素で効率的な運営がなされているのか。メスを入れるべき部分はないのか。国会議員が何百人もいて、なぜ誰もこのことを言わなくなってしまったのだろう?

 

2%の増税分、ポイントで還元とか、いや現金でとか、はたまた商品券で還元せよ、などと議論されているようだ。こんな報道を聞くと、怒りがこみ上げてくる。国民を馬鹿にしている。真に増税が必要なら、多くの国民は還元とか軽減という言葉に惑わされることなどないはずだ。粛々と受け入れるはずだ。

 

そんなことよりも、「増税の前にやるべきこと」をもう一度思い返さねばならない。

 

徹底した行政改革なくして、増税の効果、成果は水泡に帰すだろう。

 

 

農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)

 

 

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