線香配るなんて、もうやめてほしい

 

こさいたろうの視点・論点 0037

2018/02/11

 

 

線香配るなんて、もうやめてほしい

 

 

週刊新潮の記事に端を発し、政治家の「線香配布問題」がクローズアップされている。記事は、茂木敏充経済再生担当相が選挙区内において秘書を通じて有権者に線香を配布していた、という内容だ。これに端を発し、野党幹部の「政治とカネ」問題も次々に浮上。

 

希望の党の玉木雄一郎代表が政党支部から慶弔費を支出していることが明らかとなり、無所属の会の岡田克也代表が個人後援会から香典を支出していることも報じられた。そういえば、立憲民主党に移籍した山尾志桜里氏も、選挙区内の有権者に供花代と香典を支出していたのも記憶に新しい。

 

さらに最近では、立憲民主党の近藤昭一副代表、元民進党の菊田真紀子衆院議員らにも同様の問題が判明している。与党側も、菅官房長官や小渕元経産相、松本文明衆議院議員、金子原二郎参院予算委員長らが、自らの政治団体で多額の線香を購入していることが明らかになっている。

 

もうこうなってくると、法令をくぐり抜ける手法に多少の違いはあれど、明るみにでていない政治家も含め、多くの政治家が香典や線香を配り回っている実態は容易に想像できるというものだ。政党支部名で配布すれば名前が類推されない、なんてそんなことあるはずがない。

 

とはいえ、私自身が政治家秘書を経て地方議員をしていた頃、政治家としてどのような基本姿勢で、原則で冠婚葬祭に関わるか、頭を離れたことがなかったことを思い出す。例えば、香典を持たずにお葬式に参列できるか。私は、常人にはできないと考えていた。

 

 

 

公職選挙法249条の2 第3項に、議員・候補者等「本人が自ら」が参列する結婚式・葬式に祝儀や香典を持参する場合、法律違反の適用除外とする旨の規定がなされている。私はこの法令を根拠に、自らの行動の指針としていた。

 

自ら参列する場合のみ香典を持参する。それでも交際の範囲が広がるにつれ、負担は徐々に重くなる。選挙区外の方への香典は何ら問題ないのだが、選挙区外の方との交友も増えていく訳で、いくら自ら参列する場合のみとはいえ、台所事情は本当に厳しくなる。

 

本当はこんなことを公表すべきではないが、お付き合いの度合いによって包む金額も変えさせてもらった。心苦しいがやむを得なかった。しかも、お香典は受付所の裏ですぐに開封され記録される。誰がいくら持ってきたか、否応なく共有される。

 

葬儀の受付はたいてい町の方が担われているので、それとなくそんな話題になることも知っている。なので、あまりに少ない金額もいれるのも気が引けた。そういうこともあり、私自身は、葬儀への参列は限定的だった。本当にお世話になった方のものに限られるようになった。

 

葬儀は結婚式と違い、参列しようと思えばいくらでも行ける。断られることは、まずない。私はやらなかったが、常に選挙区内の葬儀情報を気にかけておけ、という議員がいたことも私は知っている。本人が参列すれば、香典を持参しても法律違反ではない。前述の通りだ。

 

でもこんなふうに政治活動する場合、香典分の収入を探さねばならない。いくら金があっても足りなくなるのは当たり前。政治家とは何か、本当に考えさせられる。元々の金持ちか、本業で稼いで片手間にやるか、それとも権力を利用して口利きの対価を得るか…

 

私が初めて議員秘書をしていた時代は、町のお祭りにはお酒を配って回っていた。車に政治家の名の入った熨斗で包んだ一升瓶をどっさり積んで、秘書が「おめでとうございます」といって神酒所を回るのだ。平成3年の頃だった。

 

その後、私が初めて議員になった最初の秋祭りの頃、地域のお祭りの役員さんに「奉納金とお神酒」を奉納するよういわれた。これまでの議員さんはみんなそうしてたと。私は断った。納得してもらった。世の中は変わりかけていた。今では渡す政治家ももらう住民もほぼいないと思われる。

 

世の中は変わる。意を決することさえできれば。お祭りの奉納金もお神酒もやめられたのだから。政治家が香典を持参する、名を伏せて線香を配る、やめようと思えばできるはず。さらにいえば、受け取る側も「政治家からは受け取らない」という風土になれば、必ず変化できると思う。

 

でも、野党党首がこんな発言をしているうちは、「希望」はないかなとも思う。『香典袋にあるいは受付に議員名を書かないなどの本人類推されないような最大限の必要な対応は行いながらやってきたので』『どんなに工夫しても受け取る側が、どう取るかがすべて』

 

弔意を示す際に「自分だと分からないようにする」なんてまともに言っているのか。工夫?死者への冒涜にも聞こえてしまうのは、私だけだろうか。いずれにしても、自らの行動を省み、責任を取ることからでなければ、変革の先導者にはなれない。希望の党の玉木氏のこと。

 

自民党のふてぶてしさも変わらない。茂木大臣はのらりくらり答弁して逃げ切りを図っている。野党も含めて「みんな同じことをやってるじゃないか」と高を括っているのだと思う。

 

相討ち覚悟で、政治家は葬式に香典を持参しない、持参したら公民権停止等の厳罰、香典にとどまらず政治家が金や物を配らないことが当たり前の社会、を作ろうと呼びかけられる政治家はいないのか。覚悟を決めればすぐにでもできるはずなのに。

 

残念でならないが、有権者の多くが念ずれば、いずれは社会が変わっていくと思ってもいる。名前を悟られないように香典を出すとか、その工夫をするとか、やっぱりオカシイから。政治家は香典を持参する方がオカシイと思われる社会に、変えていかなければならないと私は思う。

 

皆さんは、どう思われますでしょうか。

 

農夫 こさいたろう(小斉太郎;元 港区議会議員)

 

 

 

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