総選挙が終わって

総選挙が終わって

11月9日、国政に対する国民の意志が明らかになった。先般の衆議院総選挙についての私なりの感想を記してみたい。みなさまのご意見やご感想を伺えれば幸いである。

 

 

引き続き小泉改革を継続すべし

「与党三党の絶対安定多数の議席確保」これがこの度の有権者の審判であり、事実として受け止めなければならない。「小泉改革」対「菅改革」が問われた総選挙であったが、軍配は「小泉改革」に挙がった。ただし、比例区では民主党の得票が自民党を上回っていることを考えると、小泉・安倍新体制の裏に隠れた自民党の旧来体質には懸念を示されているといってよいと思う。また、公明党なくして自民党は存続し得ないということが明らかになった。「小泉改革」は選択されたが、自民党自体がもろ手をあげて支持された訳ではなく、民主党にもしっかりしたチェック役を任せたい、という選挙結果といえる。

 

 

民主党が政権交代の受け皿として認められる

一方で、選挙前に旧自由党と合併した「新民主党」は大躍進を果たし、「政権交代の受け皿政党」として有権者に認められた。ただし、一気に政権を担当させることには有権者の躊躇があった結果ともいえる。民主党のマニフェストは即席の感が否めず(実際は違うにしても有権者から見れば)、その実効性を疑問視する向きもあった。次の選挙までに、国民からの信頼感を勝ち取れるかどうかが課題であろう。「与党に疑念を抱きつつも野党に任せきれず」という結果ではないだろうか。

 

 

棄権した有権者の思いは…(過去二番目に低い投票率から)

投票率は、小選挙区59.86%、比例区59.81%で過去二番目に低い投票率に終わった。将来の日本の進路を決める上で特に重要な選挙であったと思うが、なぜこのような結果となってしまったのであろうか。今回に限って言えば、選択しきれなかった有権者が棄権に回ったともいえるかもしれないが、それ以上に根本的な問題点が横たわっているような気がしてならない。まず第一に、小選挙区比例代表並立制導入後、三回の選挙ともに低投票率が続いていることは看過できない。政治と国民の距離が拡がって来つつあるのではないか。第二に、各党ともに明確な方向性を示していないことも理由の一つではないだろうか。第三に、若年層の投票率の低さから、政治についての基礎的な教育が十分になされていないことも懸念される。

そして最後に、政治の重要性を国民が認識しきれていないことが大きな問題ではないだろうか。棄権した有権者は、自らの権利を行使する必要性を感じていないのではないか。「今のまま任せていれば何とかなる」「政治に期待しても仕方ない」という雰囲気。これは、大変危険である。内外の政治課題が山積し、わが国の進むべき道の選択を迫られている今日、国民自身が積極的に政治参加しその意志を明らかにする責任を有している。「投票の棄権」は「政治への発言放棄」を意味し、「白紙委任」を意味する。「こんなはずではなかった」という状況が生じても、後の祭りなのである。一方で、政党・政派に関わらず政治に携わる者は、その危機感を十分に認識し、何にもおいて取り組むべき課題である。国民にわかりやすい政策の提示、徹底した議論が求められている。

 

 

人物を選ぶ小選挙区、政党を選ぶ比例区

比例区の得票率「自民35.0%/民主37.4%」に比べ、小選挙区の得票率は「自民43.8%/民主36.7%」であった。この結果が示唆するものは、「人物を選ぶ小選挙区、政党を選ぶ比例区」ということだと思う。「小泉改革が選択された」「一気に政権を担当させることには有権者の躊躇があった」と先述したが、それは結果であり、実は、有権者の中の「自民党政権存続でいいのか」「民主党に任せてみてもいい」という揺れる気持ちが見て取れる。では、何が勝敗を決したか。これは明らかに小選挙区選挙での自民党(+公明党)の勝利である。私は、「政党選挙」「政権選択選挙」とは言っても、小選挙区制での選挙は人物を選択するウエートが非常に高いと思う。小沢一郎氏は選挙後、「(民主党候補は)地元活動が自民党の1/10」と話した。まさに言い得て妙である。所属政党の理念・政策が重要視されるべきは言うまでもないが、それと同じ位に候補者への信頼感、発言や行動、滲み出る雰囲気も選択の重要なポイントである。真の二大政党の一翼を民主党が担う前提に、小選挙区選挙の本質を知るということがあげられると思う。

 

あなたなしでは生きてゆけない(公明党と自民党の関係)

先述したように、小選挙区選挙では自民党が勝利したが、その勝利には公明党の存在が欠かせないことが明らかとなった。つまり、公明党の協力なくして勝利はなかったのである。今回の選挙の最大の特徴といってもよい。私は、この状況に大いなる不安を禁じえない。宗教団体を母体とする公明党の組織型選挙は、確実な票を獲得するという意味では「甘い蜜」のようなものである。しかし、政権を担当すべき政党が、そのような背景を持つ他党の協力なくして存立し得ないということは情けないことではないだろうか?今回の結果をもって、自民党は公明党にますます頭が上がらなくなる。選挙での国民への約束を本当に十分に果たし得るのか、極めて疑わしくなる。選挙で一度吸った「甘い蜜」からそう簡単に離れることはできないだろう。自民党には、改めて真剣に考えて頂きたいと念じて止まない。また、私は、この点については非常に不健全な状態であると厳しく指摘したい。

 

 

マニフェスト対白紙委任

私は、今回の選挙において、民主党はマニフェストの中で、具体的な政策の内容、実現の道筋を不十分さはあるにせよ国民に示したと思っている。さらに、政権交代の際の閣僚名簿を、内容はともかく事前に発表したことも評価できる。一方で自民党は、「これまでの小泉を見てくれ」「安倍氏を幹事長に起用するほど自民党は変わった」と訴えたが、政策的には白紙委任を求めていたと感じている。道路公団民営化問題では「民営化の方針を決定した」とはいうが、「具体的な中身は選挙後法案で示す」「総裁人事は選挙後に」という姿勢。郵政民営化も「19年4月に民営化する」とはいうが民営化の中身については全く触れられていない。イラクへの自衛隊派遣についても「派遣は決定した」というのみで、具体的な説明はほとんどなかった。経済改革についても、その目標数値は掲げられているものの、そこに至る道筋はほとんど示されていない。つまり、「小泉を信じて白紙委任してくれ」といっているに等しいのである。私は、次の選挙においては、このマニフェスト選挙を十分に総括し、国民に具体的な政策とその道筋を提示するかたちに各党とも改めてほしいと感じている。55年体制、東西冷戦に基づく保革対立の政治状況においては求められていなかったかもしれないが、現在は確実に時代が変化している。多くの国民は、責任ある選択の機会を求めているはずである。さらに、各党には、日本をどんな国にしたいのかという明確な政治理念も分かりやすく示してほしい。党内の対立で明確に示せないという言い訳はもはや通用しない。

これを明確にするには、現在の政党の枠組みでは難しいというのが私の結論である。遠からず、理念・政策に基づく政界の再編成が必要となるはずである。政党は、選挙に勝つことが目的ではないはずだから…

 

 

政界の再編成まで話が及んでしまったが、ともかくも、一つの政党が政権を独占しつづけることの弊害は露呈しつつある。今回の結果は「小泉信任」であったが、私たちはその成り行きをしっかり見定めて、改革が着実に進むようならば引き続き政権を担当させ、先行きに信頼と期待を寄せられない場合は政権を交代させる判断と勇気が必要ではないか。これは、国民の権利であり責務である。戦前の一時期、元老西園寺公望が、時の政府が行き詰まった際は野党に政権を渡すという「政権交代システム」を、天皇になり代わり一手に引き受けていた。これを「憲政の常道」と呼んだ。それから約70年、西園寺の役回りを国民が担う時が来たともいえる。私たち国民に判断が明確に委ねられるようになったことが、今回の選挙の最も重要な変化であったと感じている。


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