平成7年度港区議会海外研修視察団視察報告(小斉太郎担当分)
平成7年度港区議会海外研修視察団視察報告(小斉太郎担当分)
視察場所:アメリカ赤十字社ロスアンジェルス支部
American Red Cross Los Angeles Chapter
2700 Wilshire Boulevard Los Angeles , California 90057
担当者:Mr. Don W. Guidry : International Services Specialist , Emergency Services
視察テーマ:ボランティア活動の実際と自治体の関係
▽ アメリカ赤十字社
1881年設立されたアメリカ赤十字社は、1905年、アメリカ議会より設立許可を与えられ、それ以来災害と戦争の際、非営利団体としてボランティアを組織化するなどの活動が義務づけられている。つまり、行政組織とは別個の災害救援のための団体が、権限と責任を付された上で存在しているといえる。
▽ アメリカ赤十字社の災害時の対応
アメリカ赤十字災害業務計画が策定されており、災害時は計画上、以下のような業務を行なう。
1 シェルター(避難所)の運営。
2 食事の提供。
3 緊急の性格を持つ被災者あるいは被災家族のニーズへの対応(食料品・雑貨、衣類、家庭用品の購入手段の提供を含む)。
4 メンタルケアを含めた、災害時ヘルスケアサービスの提供。
5 被災地域外の被災家族関係者からの問い合わせへの対応。
6 救出作業に関する他のボランティアや企業、労働団体、政府などとの調整。
7 被災者が利用可能なサービスに関する広報。
8 一般からの義援金の募集、受け付け。
▽ LA赤十字社の災害対応 (ノースリッジ地震の体験から)
災害発生時は前項の計画を現場レベルで実行する。その主な具体的事例は以下の通り。
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準備体制 |
災害救援活動 |
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学校区の長、協会等との契約(キッチンやシャワーのある場所) |
シェルター(避難所)の確保
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学校・刑務所の大量食料供給のノウハウ学習 ホテル・レストラン協会、各企業等との提携 |
食事の提供・支援 |
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ボーイスカウト・ガールスカウトとの連携 |
被災者の子供たちのケア |
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米国心理学会との連携 |
被災者の、精神医学者・心理学者によるメンタルケア |
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退職看護婦の協会との契約 |
初歩的なメディカルケア(医者の補助) |
この他の災害救援対応
l フィーディングビークル(キッチントレーラー)による食事の提供。全米で128台(カリフォルニアでは平時50台が展開している)、1台で数百食準備可能。
l 住居をなくした方へ、敷金を肩代わりし、住居を保障。
l 赤十字社がバウチャーを発行し、近隣の商店を経由する生活必需品の支援(コミュニティーも潤うような一方通行ではない支援体制も目指している)
担当者の説明では、特に、食料供給を中心とする避難所の運営は赤十字社が行なうということで、政府・社会から認知され、期待されているとのことであった。
▽ ボランティアのコントロール
前項のような活動は、ほとんどが登録されたボランティアによって行なわれる。アメリカ赤十字社全体では、50名のボランティアにつき1名の有給スタッフという構成である。ボランティアをコントロールするのはスタッフィングオフィサーと呼ばれるスタッフで、登録されたボランティアをニーズにあわせて適当な場所に派遣する職責を負う。
ノースリッジ地震の際は登録ボランティア約5000名に、電話が不通になることを前提に設置してある無線を使い連絡を取った。更に、これ以外にも約1万名のボランティアが、災害発生後新たに加わった。初めてのボランティアには、初歩的訓練を現場で受けてもらい、活動してもらった。この後、もう1ランク高い訓練を受け、次の機会に備えるボランティアもいる。これが、ボランティアのベースになる訳で、層の厚さを感じる。
また、他のボランティア組織とも平時より連携を深め、調整を行なっている赤十字社は、議会の承認を得た組織という以外にも、リーダー的な役割を担っているといえよう。
▽ 行政との連携
行政(ロス市)と赤十字社・救世軍は災害発生時の迅速で効率的な救援活動を行なうため、毎月1回のミーティングと年数回の災害訓練ドリルを行ない災害に備えている。行政がすべてを管理するのではなく、それぞれの職務分担・責任が明確であり、対等に連携している形である。このような体制を平時から構築していれば、災害発生後の混乱をより少なくできるのではないだろうか。(救世軍に関しては視察対象ではなかったので明確に言及できないが)
▽ 視察を終えて
この7ヶ月の間に、日本から20以上の団体がロス赤十字社を訪れ、視察・研修を行なっているという。担当者ドン・ギドリー氏は、「多くの日本人が災害に対する認識を強く持ちはじめている今、これらの市民や団体をコーディネートすべき。いろいろなうねりを組織化できるはずだ。」と指摘した。
ロス赤十字社を視察し強く感じたことは、自発的市民組織と行政とが同じレベルで活動していることである。日本では、災害対策だけに限らないが、とかく市民が行政に多くを依存し、行政は多くの仕事を抱え込む。逆に、制度的な裏付けもあり、行政が仕事を手放そうとしない、よく言えば責任感、悪く言えば既得権の保護、という体質がある。もちろん、行政が本来的に行なわねばならない業務も多岐にわたる。だからこそ、せめて災害発生時には、赤十字社を中心とするようなアメリカ型のボランティア組織が市民自治の観点から必要ではないだろうか。阪神淡路大震災の教訓からも、緊急時対応の多くを行政に依存することは、対応の遅れや、縦割り型の対応が目立ち大変危険であるといえる。
ギドリー氏は、ボランティアが生まれる素因を「自分のことは自分でやる・家族形態の崩壊・近くに住んでいる人たちで助け合う、という社会へ移行していること」と分析していた。これは、現在の日本にも当てはまる。阪神淡路大震災でも明らかになったように、日本にも、港区にもボランティアの素地は十分にあるものと考える。早急な対応策が望まれる。
ちなみに、ノースリッジ地震の際に集まった寄付は1億5000万ドル。アメリカ赤十字社はこのような寄付金で運営されており、行政からの補助金等は一切ないということである。