どうなる都営青山北町アパート
気になる 情報提供なき東京都の姿勢
青山表参道にほど近い一角に都営住宅がある。5階建て前後・エレベーターなしの建物が25棟連なる大規模な公営住宅で、建物は一度更新されているが、戦後初の都営住宅といわれる。4fに及ぶ敷地に足を踏み入れると、青山と思えないほど緑深く閑静で、ゆったりとした時間が流れている。
数年前から、この場所の将来についてさまざまに噂されていたのだが、ここにきて、東京都が住民の転居を勧めていると耳にした。この5月にも数十の世帯が転居するとも聞き及ぶ。住民の話では、東京都は昨年より「住宅の建て替えはしない」との方針を伝え、港南(品川駅の海側のエリア)に新築された都営住宅への転出を斡旋しているとのこと。さらに、早く決断しなければ「港区内への転居は不可能になる」と急かしてもいるそうである。
このように、住民を急いで転居させようとしている東京都の姿勢には、何らかの思惑を感じざるを得ない。「住宅の建て替えはしない」という言葉が事実ならば、大規模な開発に連なることになるのは想像に難くない。当該地の敷地規模や現状果たしている役割を考えれば、開発方法の如何に関わらず、青山地域のまちなみに重大な影響を及ぼすこととなるのは必定だ。
しかし、このような重大問題に関わらず、近隣の住民をはじめ地域住民に対しては何らの情報提供もなされていないのである。この事実を受け当誌では、港区役所の複数の幹部職員にも取材したが、この件に関しては全く情報を得ていなかった。なぜ、地域住民にも区役所にも何らの情報をも伝えずに、東京都はこのような動きをしているのだろうか。東京都が、青写真の全くない中で住民に転居を求めているとは考えにくい。情報公開・説明責任が大いに求められている今、東京都は何を考えているのか、不信感を拭うことはできない。
青山は、青山通りと明治神宮表参道をはじめとした象徴的な大街路を有し、その背後の路地に良好な生活環境が広がる。生活の場、商業、文化創造の拠点がうまく混ざり合い、絶妙な都市空間を形成している。さらには、明治神宮や神宮外苑、東宮御所、青山霊園などに囲まれた緑豊かな地域であることも、まちに潤いを与えている。あたかも、山林が豊かな水を蓄え、それが清水として溢れ、やがて川になるように、緑から生み出される澄んだ空気、落ち着いた生活を営む人々、ゆったりとした環境で育まれる文化、それらが路地から溢れだし混ざり合うことで、青山のまちの魅力がかたちづくられている。大きな空き地が出現し、経済至上主義的な開発が行われ、青山独特のまちなみが損なわれることになるならば、青山が青山でなくなってしまうはずだ。
もし、都営住宅がなくなるというのであれば、その空間をどうするのか、青山の魅力を保ち、歴史や文化を尊重し、さらに発展させるためのまちづくりとなるように、地域住民が主体的に取り組まなければならないのではないか?なぜならば、どのような開発がなされるにせよ、その結果を背負い続けるのは地域の人々になるからだ。港区役所も、「地域主体のまちづくり」を掲げているのだから、「情報はありません」では職務怠慢だ。地域住民とともに積極的に関与すべきである。
当誌としては今後取材を続け、東京都の動向に注目していくとともに、微力ながら、地域住民による「青山のまちづくり」の実現を応援したいと考えている。