耐震強度偽装事件発覚
港区の関係物件はマンション三棟
去る十一月十七日、千葉県市川市の姉歯建築設計事務所が構造計算を行った建築物について、構造計算書の偽造が発覚した。偽造された構造計算に基づく設計によって施工された建築物は、耐震強度が極めて低い。当初の発表では対象物件は二十一件だったが、その後、姉歯氏の偽装が続々と明らかになっている。
港区内の対象物件は三棟(区役所発表)。いずれも姉歯氏が構造計算した潟Vノケンが建築主のマンションで、十一月二六日現在、芝大門、芝浦の二棟は建物解体が決まり、東麻布の物件については対震度を検証中。
全ての関係者の関与が疑われる
建築士が構造計算書を偽造するという行為は何があっても許すことはできない。しかし、確認検査のチェック機能はなぜ働かなかったのか。施工時にはおかしさに気付くことはできないものなのか。この事件の本質は、単に姉歯氏の偽造という事実にとどまらず、業界の根深いなれあい・癒着体質にあると推測せざるを得ない。
建築物の「計画・設計・確認・施工」という一連に関わる全ての関係者の関与を疑った上で調査し、事件の全容解明を図ることが強く求められる。今後、被害者への救済にとどまらず、以下のような取り組みが求められるのではないだろうか。
「姉歯」だけなのか?
全構造計算書の再確認
この事件の背後には、建築主サイドの圧力が偽造の動機となっている可能性が指摘されている。ヒューザー社社長が云う「経済設計」が、仮に事件の本質であるならば、姉歯氏以外にも同様の行為を行っている者がいてもおかしくない。姉歯氏関連の物件にとどまらず、全ての建築物についての構造計算書の確認が必要ではないだろうか。
構造計算書だけなのか?
全建築物の耐震診断
この事件により業界の信用は失墜した。単に書類の偽装が疑われるにとどまらず、たとえ設計は適正でも、設計通りに建てられているかさえ疑わざるを得ないということだ。建築確認制度では、施工時に現場を確認する中間検査のしくみがあるが、この事件のケースでは全て素通りしてしまっている。建物の安全を立証させるためには、全建築物の耐震診断が必要ではないだろうか。
公費負担と責任者負担
この二点については、国民の生命や財産を守る観点から、公費を投入してでも行わなければならないと考える。ただし、忘れてならないのは、業界全体の責任を明確にし、その責任をしっかり果たしてもらうことだ。当然、責任には費用の分担も含まれる。
建築確認制度の機能不全
この事件を通じて、建築物の設計を確認する仕組み、チェック機能が有効に働いていないことが明らかとなった。耐震性という、安心・安全な生活の大前提となる建物の性能を確認できなかった衝撃は計り知れない。イーホームズをはじめ地方自治体等、偽装を見逃した検査機関の検証と責任追及は必要だが、仮に、イーホームズ社社長の「検査自体は適法に行った」との弁を受ければ、制度そのものに欠格があると断ぜざるを得ない。制度運用のみならず、制度そのものの厳しい見直しが必要だ。時間や費用をかけても不正を見抜けるシステム作りが急務で、抜き打ち査察の実施や認定取消を含む罰則の強化も避けられない。
ユーザー本位のチェック機能を
この事件に接し、ユーザー(建物の購入者や利用者)の視点によるチェック機能が実質的に存在しないという風土が事件発生の根底にあると考える。つまり、建築物の安全性の確保は作り手側に委ねられているということだ。これをユーザー側に取り戻さない限り、根本的解決には至らない。
そこで、私は「建築後の再確認・耐震診断」の導入を提案したい。費用負担は建築主、検査機関はユーザーが選定する。これにより、問題が発覚すれば建築主や事前確認機関の責任は免れず、大きな抑止効果が期待できるはずだ。実現には、ユーザーが検査機関を選定しやすくするための社会基盤作りが必要だが、これは政治の役割である。
自らの安心・安全は自らが守る時代であることを自覚しなければならないことが、この事件が示す教訓といえる。